第9回中央新幹線小委員会 環境面についての審議

あまりにも暑くて、脳ミソが茹で上がりそう。

思考回路が停止してしまったので、2011年の春ごろに書いたブログ記事をやや修正して再掲します。今、大問題となっている南アルプスの環境保全について、諮問を受けた国交省中央新幹線小委員会はどう考えていたのか・・・という話です。

2010年10月20日に開かれた第9回小委員会では、伊那谷ルート(Bルート)と南アルプスルート(Cルート)との比較が行われていました。その議事録になります。





(ここまで、国土交通省の職員が環境評価事項についての大雑把な地図を説明。それに対しての家田委員長の発言。)
【家田委員長】 どうもありがとうございました。
いわゆる戦略的環境アセス、つまりプランニングの段階で複数の代替案に対しても、大ざっぱなものでやむを得ないんだけれども、環境の点からチェックするという趣旨の作業をすることになっておりましたので、それをやっていただいた資料でございます。
 ご専門的な立場から、まず中村さんからご解説やコメントをいただけるとありがたいと思いますが。

【N臨時委員】 印象は、やっぱり粗過ぎるというのが正直なところです。25キロの帯をつくらなくてはいけなかった理由というのはいろいろあるんだと思うんですけれども、この25キロの帯の中のどこを通すか1つにしても、いろいろな自然環境が当然、含まれてくるし、それに対する影響も変わってくると思われます。また今回の議論というのはあくまでも東京から大阪までのごく一部のルートが抽出された中でのご説明だったので、全体の議論ではないし、その辺も含めて考えると、いわゆる戦略アセスというレベルでもないと思います。
 こうした条件のなかで、しかも幅25キロという非常に広い議論の中でこのデータを見せていただいたとして考えると、原生的な自然は確かに南アルプスルートが多いという印象を持っています。ただ、伊那谷においても天竜川の流域であったり、もしくは八ヶ岳が入っていたり、当然、延長としては長くなってきたりということで、伊那谷のほうにも重要な自然環境というのは残っているなという感じがしています。ということで、正直言うと、この幅25キロのこの中でどうするかという議論ですら、戦略アセスのレベルなのかなという感じがしますので、自然環境的に見て、どちらがいいといったような議論は少々無理だと思われます。どちらにしても、自然豊かな環境が残っているというのが正直なところで、原生的な自然ということで限って言えば、南アルプスルートが多いというのが今のこのデータが示すところなんだと思います。
 それから、この委員会で、これは個人的意見ですけれども、戦略アセスという形でまとめるのはやっぱり時間的にも無理だと思います。この委員のメンバーもどちらかというとリニアに詳しい工学的な知見をもっている方や経済的な知見に詳しい方はたくさんおられるんですけれども、私自身も北海道ですし、いわゆるこの地域の自然環境なりをよく知った方々が委員としておられないということを考えると、時間的な制約も含めて、アセスを実施することは、ちょっと無理なんじゃないかというのが私の意見です。実際にこの委員会からルートも含めて提言された場合には、事業主体のほうでもう少し詳しい、25キロをもっと縮めた形での戦略的なアセスも含めて、法にのっとった手順でやっていただくのが一番いいのかなというのが私の率直な意見です。
 以上です。

【家田委員長】 どうもありがとうございます。この粗さでは戦略アセスという段階になかなか入りにくいねというようなお話だったかと思います。戦略アセスとは言えないかもしれないんだけれども、ざっと見たところでいうと、この2つのルートで見ると、どっちもそれぞれ特徴があって、この面から見て、つまり環境という面から見てどっちが決定的にだめとか、そういうことにはならないねと、そういうご判断ということでいいですか。

●ブログ作者の疑問
「提示された資料が粗すぎて議論のしようがない」という発言を、「環境面から見てどちらか比較することはできない」にすり替えちゃっているような気がしないでもない。ちなみに家田委員長は戦略的環境影響評価制度の専門家。


【N臨時委員】 はい。

【家田委員長】 どうもありがとうございます。
それじゃ、ほかの委員から、どうぞご質問やコメントをお願いしたいと思います。どうぞ。

【O臨時委員】 すいません。全然よくわかっていないんですけれども、これは平面的な話だけしていますけれども、当然、縦断的な話がありますよね。だから、縦断的に考えたら消えてしまう話も随分あるわけですよね。その辺は濃淡つけないで淡々とこういうふうにやるんでしょうか。

【S技術開発室長】 今のこの場でできることはその範囲だと、今のところ我々はそう考えております。縦断を示すということになりますと、もうルートはある意味、特定されてしまう……。

【家田委員長】 縦断というのは深さですか。

【O臨時委員】 深さですね。

【S技術開発室長】 そこは手続的にも整備計画の決定以降の議論になってくるのではないかと考えております。

●ブログ作者の疑問
縦断的に考えたら消えてしまう話とは逆に、縦断的に考えたら新たに出てくる問題もあると思うのですが・・・?
 

【家田委員長】 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

【W委員】 49ページ以降のまとめというか、全体を見てわかるような内容の部分で、1つは、それぞれの環境の要素で8項目ですか、いろいろ出していただいたんですが、勉強不足で恐縮なんですけれども、それぞれのいろいろな要素のファクターがいろいろ入っていますが、つまりそのときに、リニアでも何でもいいんですけれども、通すときに、沿線の自治体の何かしらの承認を得なければいけない項目というのはあるのかないのか、もしあれば、どんな環境要素の中のどんな項目がそれに該当するのか、一般的な新幹線法とは別に、その辺をちょっとわかれば教えていただきたいというのが1つです。2つ目は、前にもご提起は受けているんですけれども、一応、環境の部分で、オーソドックスに言って環境破壊に影響するのかしないのかというようなこととか、あるいは生態系のサイクルで大きな影響があるのかないのか、この辺のオーソドックスなところも教えていただければと思いますので、よろしくお願いします。

【S技術開発室長】 まず1点目でございますけれども、例えば必ず出てくるのは、例えば保安林の解除とか、農地の転用です。土地の改変をする場合に許可が必要になる項目として代表的なものです。それから、当然、自然公園のエリアでもって同じようなことをやるには、環境省が所管になりますが許可手続が必要になります。網羅的にご説明できませんが、代表的なものとしてはそういったようなものがあるということでございます。後段のご指摘は、まさにそういうことをより具体詳細に、生態系への影響等を含め評価していくのが環境影響評価のプロセスでございます。2年から3年ぐらいの期間をかけてフィールド調査に基づいて、事業を行った場合の影響がどういうことであるかということを評価するもので、これは法に基づいて行うことが定められております。

●ブログ作者の疑問
ここで出てこなかった河川法が後々に大きな壁となって表れたのだけど・・・。


【家田委員長】 ほかにはいかがでしょうか。

【A臨時委員】 水の項目で問題になりそうなのがトンネルによって地下水系が切られて、それで生活用水で使っていたものが使えなくなるということで、実際に実験線の場合でもそういった事例があるようですが、それについてのデータというのは調べられるものなんでしょうか。環境アセスメントのときには地下水系は項目外なのでしょうか。もう1つは、南アルプスを世界遺産に登録する件に関して景観の面などから見て、世界遺産登録の際にトンネルなどの構造物が何か影響があるのかというのが、もしおわかりでしたらお教え願いたいと思います。

【S技術開発室長】 前段のほうは、もちろん環境アセスは当然地下水の状況を詳細に調べて、水環境への影響を調査します。今までの事例でもやっておりますが、それでも水がれ等がトンネル工事があると発生している場合があるという事実はそのとおりでございますし、実験線の工事現場でもあったことも事実です。それについては、地下にたまっていたところに当たってしまって、たまたまそこを水源に使っていた河川だとか、沢だとかがかれてしまうということは、どうしても今のアセスでも100%予想できないということは事実で、その場合には一定の補償基準に基づいて、補償させていただくということでこれまでもすべて対応しております。当然、極力事前のアセスで調べるわけですが、それでもやはり生じてしまった場合には、必要な補償をルールに従ってやるということになろうかと思います。

【家田委員長】 ほかにどうですか。まだご発言いただいていない委員の方々、よろしいでしょうか。ありがとうございます。そうすると、ここまでのお話でいうと、とにかく環境面でどっちかのルートが決定的に問題を持っているという状況にはないということが確認できたという意味で、建設的な結果が得られたんじゃないかと思います。とはいえ、その環境面の特徴も、南アルプスルートは自然環境的な面が強いし、伊那谷ルートは、もちろん自然もすばらしいんですが、遺跡とか、神社とか、人文環境や、それから生活環境の保全が非常に重要になってくるので、おそらくどっちにしても環境に対する配慮は十分にしなきゃいけない、これは当たり前なんですが、ちょっと方向の違う環境配慮というところがおわかりになったんじゃないかと思います。したがいまして、この資料2をもってどのルートがだめとか、いいとかという話にはならないねと。それで、おそらく先ほどの資料やその他もろもろの判断から、いずれルートの結論が出た際に、そうすると、この二十何キロの幅がもう少し狭まった範囲の中で、本当にトンネルはどこなのかとか、駅はああだとかこうだとか、トンネルの掘り口はどこなのかとか、その際に戦略アセスみたいなことをもうちょっと厳密にやっていくというような、その前段階を今、やっていると理解すればいいんじゃないかと思っております。そういうようなことでよろしいですか。ありがとうございます。それじゃ、この資料はそのくらいにさせていただきまして、3つ目の議題、中央新幹線小委員会の今後の進め方についてお話をお願いいたします。

●ブログ作者の疑問
赤く記した部分、本当?
この議事録の文面を見た限り、この審議において確認できていることは、「提示された資料が大雑把だし専門家もいないので審議しようがない」ことだけのように思われます。そのほかには、何も中身のある議論は行われていません。どこから「決定的に問題を持っているという状況にはないことが確認できた」のでしょうか?


この審議が、計画の早期段階での環境配慮という位置づけとなり、7ヵ月後の2011年5月に出された答申では次のように書かれています。

答申ルート選定過程.jpg

しかし「環境の保全」に書いてあること内容には大いに疑問があります。「どちらがよいか、提示された資料が不十分だから判断できない」というのが、「どちらも貴重な自然環境が存在しているので環境保全には十分な配慮が必要」という結論に化けているように見えるのです。


また、この第9回委員会の開かれる16日前の10月4日、環境省は南アルプス周辺地域について、現状の国立公園区域と同様に生態系保全上重要であるとして公園区域を拡張する方針を発表しています。その話題については、第9回委員会では取り上げられていません。
kankyoushou-minamiarupusu.jpg

【環境省】調査をしてみたら、南アルプスとその周辺部はわが国の生物多様性保全上重要な地域であることが判明したので、国立公園区域に指定して保護地域とする。

というのと、

【国土交通省】南アルプスとその周辺について、環境面から工事を行ってよい場所か判断するために調査をしてみたが、資料が不十分でよく分からなかった。とりあえず環境面については不問とし、計画を認める。あとは適当に配慮しなさい。 

とでは、えらく違うと思うのですが・・・。



最近、中日新聞静岡版にて「考えるリニア着工 なぜ決まったCルート」と題した記事が連載されました。その記事を考える一助にしていただければ幸いです。

この記事へのコメント

2020年08月16日 21:21
Cルートありきで杜撰な審議だったということが分かりますね。
この家田という人物の結論らしき部分は、前段からの議論の繋がりを断ち切っていて意味不明だし、意図的に無視したのか、シナリオをただ読み上げているのか分かりませんが、あまりにも滑稽な議事録です。
紹介いただいた内容の中で、例えば、N臨時委員のくだり、家田の訳のわからないまとめに対し、N臨時委員はその場できちんと異を唱えるべきだったのでは。環境問題についてろくに議論しないまま、このような結論に至らせてしまった他の委員も同罪なのではと率直に思います。
最近、国交省で行われている「有識者」会議も、そもそも議事録が出てくるのか分かりませんが、確実に静岡県の環境や水資源を毀損することになるのです。「有識者」として報酬を得ている以上、きちんと名前を明らかにして責任を持った意見を言って欲しいものです。そして後世にその時の発言が詳かにされ、批判されるということを自覚するべきでしょう。
ブログ主
2020年08月16日 22:36
法律では、交通政策審議会に諮問すべき事項は

一 基本計画の決定及びその変更に関する事項
二 第六条第一項の規定による営業主体又は建設主体の指名に関する事項
三 整備計画の決定及びその変更に関する事項

となっているので、環境面については深く検証する義務はないのかもしれません。しかし、環境配慮を先送りした結果、現実問題としていまだ着工できていないのですから、当時の見通しが甘かったと言えるかもしれません。家田氏は小委員会の結論が出る前にリニア推進を新聞紙上で訴えたりしていたので(2011年元日 建設通信)、人選としてもいかがだったのかな?という気もします。