供用中の鹿児島のトンネルで大出水 トンネル掘削後に止水するのは難しいらしい・・・
(7/30 加筆)
岐阜県瑞浪市において、リニアの日吉トンネル掘削に伴い地下水位が低下した問題。
JR東海は、薬液注入によりトンネル内への湧水を低減させるとしています。
この案について、岐阜県庁で開かれた令和6年6月24日地盤委員会にて、JR東海が参考として例示したのが鹿児島県の国道504号北薩トンネル(2018年供用開始)。

【資料3 事案説明より】
この北薩トンネルについては、施工を請け負った熊谷組のホームページに詳しい説明があります。
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2017/pr_170125_1.html
延長100mの減水対策工実施区間で、計画どおり地山の透水係数を4×10-4cm/sec から4×10-6cm/secに改良し、最大300t/hあった湧水量を40t/h以下に低減しました。こうした減水対策工は、全国にも事例がありません。
ということで、たいへん画期的な技術と評価されたらしく、2021年には一般社団法人 日本建設業連合会が主催する日建連表彰において土木賞を受賞しています。
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2021/nw_20210824_01.html
ところが。
今月25日に路面の変形が発生。厚さ30㎝のコンクリート壁には大穴が開き、土砂とともに水が噴き出し、完全に通行不可能となってしまいました。動画を見ると、かなり悲惨な状況になっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/62f4794b736e25de03eb17a8a4412d27f67e4035
最初から薬液注入による地盤改良を行い完全に防水構造とする場合は、水圧に強い円形の断面を採用するのが一般的なようです(圏央道の八王子城跡トンネル、新名神高速道路の箕面トンネルなど)。これに対し北薩トンネルは、当初は排水構造(トンネル内に湧水を流す)で計画されたため、山岳トンネルで一般的な馬蹄形断面(まんじゅうのような形)を採用。しかし計画を変更して止水対策を施したため、過剰な水圧がかかって破損してしまったのかもしれません。
⇒パンフレットに施工パターンの概略図がある
また、施工方法について書かれたレポートによると、止水対策を施した前後の区間は遮水構造としていなかったそうです。そこに地下水が集まり、高い水圧がかかってしまったのでしょうか。
【自然由来のヒ素を含む大量湧水の減水対策 -北薩横断道路 北薩トンネル(出水工区)-】
検索を続けると、「一般社団法人 九州地方計画協会」のレポートで次のような指摘がされていたことに気付きました。
減水工の実施により対策区間の湧水量は減少したが、地山間隙水圧は増加している。現時点では支保体の変形は見られていないが、地山間隙水圧が上昇し、トンネル断面に覆工の許容を超える応力が発生した場合、覆工にひび割れや変形が生じる可能性が懸念されていることから、「北薩トンネル技術検討委員会」での意見を踏まえ、地山間隙水圧の変化に伴う覆工変形・応力を測定し、トンネル構造の安定化を確認する目的で、地山水圧や覆工応力測定等を実施しており、トンネルの安全性や減水対策工の効果の確認を実施している。
【北薩トンネルにおける大量湧水を減水するRPG工法について】
当初から、不気味な前兆はあったようです。
とにもかくにも、一度、大量湧水の起きたトンネルで止水をおこなうのは難しいようです。
なお、大量出水が起きた区間の土被りは250m前後。これぐらいの水圧で止水困難ならば、南アルプスだとまず無理だよなあ。
岐阜県瑞浪市において、リニアの日吉トンネル掘削に伴い地下水位が低下した問題。
JR東海は、薬液注入によりトンネル内への湧水を低減させるとしています。
この案について、岐阜県庁で開かれた令和6年6月24日地盤委員会にて、JR東海が参考として例示したのが鹿児島県の国道504号北薩トンネル(2018年供用開始)。

【資料3 事案説明より】
この北薩トンネルについては、施工を請け負った熊谷組のホームページに詳しい説明があります。
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2017/pr_170125_1.html
延長100mの減水対策工実施区間で、計画どおり地山の透水係数を4×10-4cm/sec から4×10-6cm/secに改良し、最大300t/hあった湧水量を40t/h以下に低減しました。こうした減水対策工は、全国にも事例がありません。
ということで、たいへん画期的な技術と評価されたらしく、2021年には一般社団法人 日本建設業連合会が主催する日建連表彰において土木賞を受賞しています。
https://www.kumagaigumi.co.jp/news/2021/nw_20210824_01.html
ところが。
今月25日に路面の変形が発生。厚さ30㎝のコンクリート壁には大穴が開き、土砂とともに水が噴き出し、完全に通行不可能となってしまいました。動画を見ると、かなり悲惨な状況になっています。
https://news.yahoo.co.jp/articles/62f4794b736e25de03eb17a8a4412d27f67e4035
最初から薬液注入による地盤改良を行い完全に防水構造とする場合は、水圧に強い円形の断面を採用するのが一般的なようです(圏央道の八王子城跡トンネル、新名神高速道路の箕面トンネルなど)。これに対し北薩トンネルは、当初は排水構造(トンネル内に湧水を流す)で計画されたため、山岳トンネルで一般的な馬蹄形断面(まんじゅうのような形)を採用。しかし計画を変更して止水対策を施したため、過剰な水圧がかかって破損してしまったのかもしれません。
⇒パンフレットに施工パターンの概略図がある
また、施工方法について書かれたレポートによると、止水対策を施した前後の区間は遮水構造としていなかったそうです。そこに地下水が集まり、高い水圧がかかってしまったのでしょうか。
【自然由来のヒ素を含む大量湧水の減水対策 -北薩横断道路 北薩トンネル(出水工区)-】
検索を続けると、「一般社団法人 九州地方計画協会」のレポートで次のような指摘がされていたことに気付きました。
減水工の実施により対策区間の湧水量は減少したが、地山間隙水圧は増加している。現時点では支保体の変形は見られていないが、地山間隙水圧が上昇し、トンネル断面に覆工の許容を超える応力が発生した場合、覆工にひび割れや変形が生じる可能性が懸念されていることから、「北薩トンネル技術検討委員会」での意見を踏まえ、地山間隙水圧の変化に伴う覆工変形・応力を測定し、トンネル構造の安定化を確認する目的で、地山水圧や覆工応力測定等を実施しており、トンネルの安全性や減水対策工の効果の確認を実施している。
【北薩トンネルにおける大量湧水を減水するRPG工法について】
当初から、不気味な前兆はあったようです。
とにもかくにも、一度、大量湧水の起きたトンネルで止水をおこなうのは難しいようです。
なお、大量出水が起きた区間の土被りは250m前後。これぐらいの水圧で止水困難ならば、南アルプスだとまず無理だよなあ。
この記事へのコメント
とりあえず、NHKの科学番組『サイエンスZERO』で最近、トンネル工事の技術革新とやらをテーマにした回を録画したので、期待しないで視聴してみます…。
進歩しているなとは感じましたが、やはり南アルプストンネルは残土管理は別としても、これらの技術の延長線上で建設できるとまでは確信に至りませんでした。。
以下のような興味深い研究も進んでいるようですが、全ての地質条件をクリアできるかどうかまでは、これからの検証が待たれます。レーザースキャナーで測量できる範囲というのは、対象物の表面からどれくらいの深さまでなのでしょうね?一つの山体全体の断面を非接触で詳細に把握する技術があれば、ボーリング調査で水が抜けることを心配しなくても済むのに。。
地質学の世界でよくわからないのは、山脈や、地球の内部構造の断面図を示し、まるで見てきたかのように解説していることです。わかっているなら、なぜボーリング調査が必要なのでしょう?そしてなぜ点での観測(決まった本数のボーリング調査)をしたことをもってトンネルを建設してもよいことになるのでしょう…?
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地震後の地下岩盤亀裂の急速シーリングに成功!(世界初) ~化石ができる仕組み応用、放射性廃棄物やCO2の地下貯留も可能に~|日本原子力研究開発機構:プレス発表
https://www.jaea.go.jp/02/press2024/p24052202/
【研究概要】
名古屋大学博物館の吉田 英一 教授、山本 鋼志 特任教授、大学院環境学研究科の淺原 良浩 准教授、東京大学工学研究科の丸山 一平 教授(名古屋大学博物館兼任)、岐阜大学教育学部の勝田 長貴 教授と日本原子力研究開発機構(JAEA)、積水化学工業(株)および中部電力(株)原子力安全技術研究所の研究グループは、球状コンクリーションの形成プロセスを応用・開発したコンクリーション化剤を用いて、地下350m環境での岩盤亀裂シーリング実証試験を行い、M5.4の直下型地震を含む11回の地震によるシーリング効果の低下と再シーリングも含め、地下水の湧水を抑制(透水性が実験開始直前の1/100〜1/1000に減少)させることに成功しました。このような地震後の岩盤亀裂を、速やかにかつ持続的にシーリングする効果の報告は、世界的にも今回が初めてとなります。
この手法は、数千年以上もの長期間の地下隔離を必要とする放射性廃棄物の地下隔離・処分のほか、二酸化炭素の地下貯留、石油の廃孔シーリングや、道路・鉄道トンネル周辺岩盤・鉱山掘削に伴う地下水抑制といった、地下環境を活用する地球規模で直面しているエネルギーや環境課題だけでなく、様々なインフラの長期メインテナンスなどのニーズに応用可能であり、メインテナンスフリーを目指す今後の幅広い技術への展開が期待されます。
【研究背景と内容】
現在、直面しているエネルギー確保及び地球環境問題への対策として、放射性廃棄物の地下隔離・処分や温暖化対策としての二酸化炭素の地下貯留などは、今後、数百年〜数千年以上もの隔離が必要です。また石油を採取した掘削廃孔からの温暖化を促進するメタンガスの放出を抑えるためにも、その永久的シーリングが課題となっています。これら核廃棄物や二酸化炭素を地下に半永久的に処分・隔離するためには、廃棄物を搬入した立坑や二酸化炭素を注入したボーリング孔を確実に閉塞(シーリング)することが必須となります。しかし、現在のセメント素材を基本としたシーリング材では、数百年以上は持たないと考えられており、それ以上の長期的効果・耐久性を有するシーリング剤の開発が国内外を問わず求められています。
この背景のもと、保存良好な化石を内包し、自然環境中で、実際に数万年〜数十万年以上に渡って風化等に耐えてきた球状コンクリーション(CaCO3)(図1、2)に着目し、その形成速度が非常に速いことを明らかにしました。
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3Dレーザースキャナーはこんな場所で活躍しています!(トンネル編) - 3D測量・解析・機器販売・ソフト開発なら | 株式会社ソーキ販売
https://sookih.co.jp/blog/725/
トンネル工事での活用事例
切羽(きりは)掘削形状モニタリングシステム
土木用語ではトンネルの掘削面のことを切羽(きりは)と呼びます。トンネル工事では発破で穴を広げた後、発破では壊しきれなかった部分を重機を使って整形する作業(あたり取り)を行います。
従来の方法では「あたり箇所指示者」と呼ばれる作業員が目視であたり箇所を判断し、レーザーポインターなどを使って掘削の指示を出していましたが、作業中のトンネルというのは危険が大きく、あたり箇所指示者の安全性の確保というのが課題でした。
切羽掘削形状モニタリングシステムでは重機に3Dレーザースキャナーを搭載することで目視以上の精度で、あたり箇所を分析が可能になりました。これにより作業員を危険な現場に送る必要がなくなったうえ、作業員の技量による精度のぶれもなくすことができます。
重機オペレーターへの指示は運転席に設置されたモニターにヒートマップを使って色分けされた映像を表示して行われるので視覚的にもわかりやすいです。
トンネルの覆工(ふっこう)工事
覆工(ふっこう)とはトンネル工事の終盤、コンクリートでトンネルの壁を作る作業のことです。
この工程ではセントルと呼ばれる半円筒形の型枠を使ってコンクリートの壁を仕上げますが、そのときのコンクリートの厚さを決めるのに3Dレーザースキャナーで計測したデータを利用しています。
トンネルの品質を長期にわたって保つには鉄筋かぶり厚さ(鉄筋表面と鉄筋を覆うコンクリート表面までの距離)が重要となりますが、従来の方法だと計測のために高所作業が必要となり非常に大変でした。
3Dレーザースキャナーの導入により省力化や見える化が可能となります。
参考リンク:戸田建設、岩崎/トンネル覆工の鉄筋かぶり厚を視覚化/3Dレーザースキャナー使用
出来形管理
3Dレーザースキャナーを使った出来形管理システムでは掘削した断面と覆工した断面を比較することでコンクリートの厚さを短時間で計算できるメリットがあります。
非接触で遠距離から計測できるため従来のように高所作業車を使った作業や巻き尺による検測なども不要となるため作業時間の大幅な短縮が見込めます。
トンネルのメンテナンス
3Dレーザースキャナーはトンネル工事だけでなく完成後の保守・点検といったメンテナンスでも役立ちます。
広くて高さもあるトンネルを1つずつ目視点検するのはとても大変です。時間や人的コストがかかる上、作業場所によっては高所作業車を使わなければなりません。
こうしたトンネル点検に3Dレーザースキャナーの非接触で測量できる性質や広範囲を一気にスキャンできる効率の良さが力を発揮します。
スキャンで得たデータからひび割れや剥離のような異常の見つかった部分だけを人間の目で確認すれば、効率よく点検が可能です。
また、トンネル全体を測量できるため、トンネルの形状変化なども確認できます。
全国のインフラの老朽化が始まり人材不足やメンテナンスコストの増大が心配される中、3Dレーザースキャナーのような新しい技術を取り入れることでメンテナンスの生産性を高めようとする動きが活発化しています。