分からないことだらけの「先進ボーリング中止」

あれだけ「早く実施させろ」と言われていた山梨県側からの超・長尺先進ボーリングですが、県境を越えた途端に中止となりました。
12月6日静岡新聞記事 

山梨県側のほうでボーリング坑が崩れて埋まってしまったためだといいますが、なんだか尻すぼみで拍子抜けした感じ。

結局、県境から300m先までは未調査となり、一番の目的であった「県境付近の大規模な断層破砕帯」の規模などは分からないままです。

で、分からないことがたくさん。

今年9月6日の時点では、軟弱な岩相が現れるなどしたため当初計画を変更し、孔口から160m地点(県境から341m地点)で先進ボーリングによって開けられた穴にケーシングと呼ばれる鋼管を挿入すると説明していました。なおケーシングはボーリング孔の崩壊を防ぐのが目的。
先進ボーリング説明9月.jpg

先進ボーリング軟弱区間.jpg
静岡県中央新幹線環境保全連絡会議 第17回地質構造・水資源部会専門部会 【資料2】山梨県側から静岡県内に向けた高速長尺先進ボーリングについて

いっぽう、先進ボーリング先端が静岡県内に到達したことを伝える11月21日の静岡新聞記事には「鋼管を当初の想定より200m以上短い距離までしか挿入できておらず、ボーリングをどこまで進めることができるかは不透明」と書かれていました。

ということは、おそらく県境の手前300mぐらいまではケーシングが挿入されておらず、崩れるとしたら、その区間である可能性が高そうです。

さらに、11月26日に開かれた国交省のモニタリング会議に提出された資料によると、孔口から370m付近と480m付近(県境の手前140m付近と同20m付近)において、やはり岩が泥状に砕けている軟弱な岩相に遭遇したとのこと。

この付近で穴が塞がったのでしょうか?
先進ボーリング軟弱区間2.jpg
【資料2-2】山梨・静岡県境付近の高速長尺先進ボーリング調査について(現状報告)


なお、湧水量はごく少なかったとのこと。

さて、この「孔口から370m付近と480m付近」の軟弱な区間とは、いったい何だったのでしょう。当初から警戒されていた断層②(図参照)の一部なのか、未知の断層なのか、あるいは「県境付近の断層」が県境を越えて広がっているのか。

また、9月6日発表の資料には「断層②付近において採水・成分分析及び湧水圧試験を実施し、その結果をご報告します」と書いてありますが、採水・成分分析は行ったものの、湧水圧試験はどうなったのか不明。

この後ボーリング孔はフタをして塞がれ、先進坑の掘削を始めたいとのこと。

ボーリング孔が埋まってしまったのは「想定外」なのかもしれませんが、これでは「話が違う」と批判されても仕方ないでしょう。

このような作業フローも作成されていましたが、結局、あまり役に立っていない印象。
先進ボーリング先進坑2.jpg

ひょっとしたら
「ヤバいものに出くわしたので封印したんじゃないか」
「県境を越えるという実績作りが目的だったのでは」
「先進坑掘削を始めるための口実づくりか?」
などと疑ってしまうわけです。

余計な憶測を避けるためにも、JR東海には詳細な説明をしていただきたいところです。ちなみに北海道新幹線の渡島トンネルでは、先進ボーリングの最中に機材が破損して調査が中止。事業計画全体の見通しが立たなくなっております。
https://xtech.nikkei.com/atcl/nxt/column/18/00142/02026/

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