巨大残土処分場 ツバクロ沢に決めちゃっていいのか?

12月17日の県専門部会では、地形条件から大問題と見なされてきたツバクロ沢の発生土置き場候補地について、これまで懸念されていた

周囲の山崩れによる影響
盛土の出現によって増水時の河道が変わり対岸の侵食が進む可能性

などは、JR東海が監視を続ける、異変があったら適切に対応するということで決着がつきそうです。今後は詳細な管理計画や設計について詰めてゆくとのこと。JR東海としては、1円にもならない残土の監視を永久に続けることになりそうですが。

まあ、人里から50㎞以上離れた山奥ですので、万が一盛土が崩壊したり、河道閉塞を起こして土石流を起こしたとしても、人命・財産にすぐに影響を及ぼす可能性は低いのでしょう。だから「安全性」という視点ではこれで妥当なのかもしれません。

ところで、こんなバカみたいにでっかい盛土が動植物や景観に与える影響は検証しないままでいいのでしょうか。

JR東海は、かつて発電所の建設工事で使用した場所の跡地だから盛土しても構わないという認識らしいです。
ツバクロ沢選定経緯.jpg
●県中央新幹線環境保全連絡会議 第18回地質構造・水資源部会専門部会 【資料1別紙1】発生土置き場の選定経緯の表 より

ただし実際の盛土予定範囲は、過去に改変された範囲を大幅に超えています。
Tsubakurosawa - コピー.jpg
●GoogleEarth画像に加筆

JR東海の植生図と見比べると、林道沿いのカラマツ植林地をも超えて、斜面下部に広がるミズナラやサワグルミなどの自然林にまで広がる見込みです。
燕沢 植生図.jpg
●環境影響評価書資料編より複製・加筆

大雑把な見立てでは、盛土範囲は過去の工事ヤード跡地の4~5倍に及ぶのではないでしょうか。

なお、GoogleMapのストリートビューで現地の様子を確認することができます。
ツバクロ沢 ストリートビュー.jpg
これは林道沿いのカラマツ林の様子。アクセスがよかったら人気の散策コースにでもなりそうな雰囲気です。

ここのカラマツ林は、厚さ50~60mの発生土で埋め立てられることになります。

いくら人工林とはいえ、伐採して植林するのと違い、残土を捨てるだけの目的で地形ごと変えてしまうのですら、実にムダで愚かな環境破壊だと思うのであります。で、JR東海としてはその残土の上に苗木を植えて環境学習の場にするつもりだとか。どこが「発生土の有効利用」なのでしょうか。


先日、令和5年度の静岡市による南アルプス環境調査(委託調査)の結果が先日発表されました。今回はツバクロ沢発生土置場候補地での植物調査が行われていますが、確認された植物種には、レッドデータブックに記載されるなど希少性の高いものが14種含まれています。今までの調査で確認されたものを含めると合計17種。
ツバクロ沢重要植物.jpg
●E地区がツバクロ沢発生土置場候補地

300m×500m程度の面積でこれだけの重要種が出てくる場所は、軽々しく改変しちゃマズいんじゃないのかな? なお動物相については詳細が不明。

なので、安全性の問題は最低条件として、それがクリアできるのなら次は自然環境に与える影響も十分に検証すべきだと思います。ですが、なぜか県中央新幹線環境保全連絡会議では、今のところは議題にあがっておりません。

マズいんじゃないの?


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