基底流出が減少するとの予測が出た つづき

(14日に書いた記事に加筆、グラフなどを16日に追加)

13日に、静岡県 中央新幹線環境保全連絡会議 第15回生物多様性部会専門部会 が開かれました。


今回、はじめてトンネル工事が基底流出に及ぼす影響が予測されました。

山地に雨が降ると、いったんはほぼ全量が地下に浸透するとされています。地下に浸透した水は、地下浅いところを速やかに進んで早々と河川に湧き出す成分と、地下深くに浸透し長期間かけて流出する成分とに分けられます。一般的に、前者を直接流出、後者を基底流出とよびます。

雨が降って(あるいは雪解け水が川に流れ込んで)川の流量が急に増すのは直接流出によるものです。

いっぽう、数週間~数か月にわたりまとまった雨が降ってないときに河川を流れている水は、基底流出によるものだと考えられます。「山が蓄えている水」とみなせます。

山岳部でのトンネル工事が地下水に与える影響を見積もるのであれば、あるいは水生生物が暮らしてゆけるのか議論するのであれば、基底流出という視点が欠かせません。しかしJR東海による予測では、これまで直接流出を基底流出とを分けていませんでした。

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こちらが今回示された予測です。西俣非常口付近を対象としています。
渇水期基底流量.jpg

令和5年度に最も流量が小さくなったのは2月中旬でした。つまり2024年2月中旬。これを基底流出量とみなし、それがトンネル工事によりどのように変化するのか予測したものです。

GEOFLOWS(静岡市による委託調査で使われた予測モデル)では、約毎秒0.17トンが毎秒0.08トン減少、JR東海が採用した予測モデルでは毎秒0.15トン減ってしまってゼロに近くなるというものでした。

あくまで予測であり、しかも薬液注入など行わないという前提条件ですが、、、かなりヤバいんじゃないかなと思います。

西俣非常口付近を流れる水は、より上流の複数の沢によって涵養されています。その西俣の水が非常に少なくなるというのは、西俣を涵養する沢の水が非常にやせ細ることを意味しているのではないでしょうか。

以下、15日に加筆

こちらは千石非常口付近での大井川本流についての予測。令和5年1月上旬の最小流量を対象にして予測しています。
渇水期基底流量 千石.jpg

ここは田代ダムから1.5㎞ほど下流。その間に大きな支流は合流していないので、ほぼ全量が田代ダムからの放流水だと見なせます。

トンネル完成後、静岡市モデルでは毎秒0.44トン減少、JR東海モデルでは毎秒0.83トン減少すると予測。この値は田代ダムに義務付けられた渇水期の維持流量毎秒0.43トンに相当、あるいは2倍に相当するものです。

ここでの実測値の基底流量(赤線:毎秒約1.15トン)に、ダムからの取水量(毎秒1.62トン)を加味した値(毎秒2.8トン程度)が、本来流れているはずの基底流量となるのでしょう。

もちろん薬液注入などを行わないという前提条件ですが、これが現実になったら、東京電力としても困るのではないでしょうか。

田代ダムでは発電施設の凍結防止のため、最低でも毎秒0.81トンを取水する必要があるそうです(以前は毎秒1.62トンと説明されていた)。いっぽう毎秒毎秒0.43トンは維持流量として手を付けず下流に流す義務がある。つまり毎秒1.24トンが流れていることが現状維持の前提条件となりますが、それが崩れてしまいそうです。

というのも、過去に東京電力から示された田代ダム地点の最低流量は、もっと小さかったからです。
田代ダム渇水期流量.jpg
【平成24年2月22日 第13回大井川水利流量調整協議会 東京電力提供資料】

上記のように、平成18~22(2006~2010)年の最小流量の平均値は毎秒1.94トンだったとのこと。毎秒1.94トンからJR東海モデルによる予測に従い毎秒0.83トン減少すると、毎秒1.1トン程度になってしまいます。これだと現状を維持できない可能性が生じる。東京電力としても、これは受け入れがたいのでは・・・?

さらに、千石よりも下流の椹島付近でも基底流量が毎秒0.47~0.85トン減って毎秒0.4トン程度に減少するとの予測。
基底流量 椹島.jpg
椹島の少し上流には中部電力の木賊堰堤があって、貯水池の赤石ダムに水を送っています。木賊堰堤に義務付けられた維持流量は毎秒0.37トンなので、流量が毎秒0.4トン程度になったらほとんど取水できなくなるかもしれません。なおトンネル湧水を大井川に排水する導水路の出口は木賊堰堤よりも下流に計画。


hatsudensho-map.jpg

田代ダム維持流量と取水上限.jpg
【平成24年2月22日 第13回大井川水利流量調整協議会 資料】

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