地質の脆弱なエリアを避けた先も地質が脆弱だった
3月4日JR東海は、山梨県の富士川町と早川町で行われている工事が完了が、最大で5年遅れることを発表したそうです。
リニア中央新幹線のトンネル工事 工事完了は最大5年半延長の見通し示す 主な理由は想定よりもろい地盤 JR東海
https://news.yahoo.co.jp/articles/3dc153127359008c86f111a5f8f2513293bffac1
相変わらず何だかおかしいよなぁ・・・
リニアのルートを西にたどってゆくと、釜無川を渡ると急に南へ曲がってS字カーブを描き、静岡県境へと向かいます。カーブ走行は苦手とされる超電導リニアなのに、このS字カーブはなんとも不自然です。
JR東海は、このS字カーブについて「巨摩山地周辺の脆弱な地質エリアを避けるため」と説明してきました。説明図によれば、南北に広がる「脆弱な地質エリア」の南側を迂回しているようです。

【JR東海作成 環境影響評価配慮書(2011年6月)より】
だけど実際に掘ってみたら、選んだルートも地質状の難問が待ち受けていたわけです。
なんのこっちゃ。
この近傍を通る中部横断自動車道がもろい地質や湧水、要対策土処理に悩まされたことから、この区間の工事が難航するのは当初から予測できたのでは?と思うのですが・・。
それに、地質の問題だけでなく、様々な要因で工事が難航しているのではないかと思われます。
●トンネル断面積が異常に大きい
富士川町内には保守基地が設置されます。保守基地への引き込み線との分岐は、富士川町・早川町境の第四南巨摩トンネル(8627m)内におかれます。その分岐部分の断面積は300㎡以上となり、通常の本坑区間の約3倍に達します。道路トンネルを含め、この規模のトンネル断面積の前例は少ないようです。ただでさえ地質条件が悪く、土被りも500m前後あるところで、大変な大断面積のトンネルを掘るのですから、そりゃ難工事になるのは当然でしょう。
https://www.nikoukei.co.jp/news/detail/327258
●水問題
静岡県や長野県南木曽町のように大きな問題にはなっていませんが、第四南巨摩トンネルも周辺の水環境に大きな影響を及ぼすかもしれません。トンネルが富士川町大柳川流域の水源地帯と十石温泉の源泉付近をぶち抜くほか、大柳川とは浅い土被りで交差するためです。さらに、トンネルは1本ではなく上述の引き込み線用にも掘られる計画。ちなみにJR東海の予測では、大柳川下流部の流量は2割減少するとのこと。


第四南巨摩トンネル内で湧水が生じると、勾配の都合上、北隣の別流域へと排水されます。大柳川流域には戻せません。ここで水枯れが生じたら流域の水資源に大きな影響が生じますし、温泉の枯渇も大問題。さらに静岡県での議論をも左右するのは必定でしょう。
●要対策土の処理に困っていそう
現在、早川町内には要対策土の仮置き場が5ヵ所、合計22.7万立米分が設置されていますが、これで足りるのかどうか。
第四南巨摩トンネルや斜坑は、昭和43年に閉山された茂倉(もぐら)鉱山付近を通過します。茂倉鉱山は明治6年に採掘がはじまり、主として石こうが採掘されていましたが、当初は金、銀、鉛、亜鉛を含む硫化物鉱石が採掘されていたそうです。
う~む、鉛を含む硫化鉱物が掘り出されたら処理に困るのでは・・・?
中部横断自動車道のトンネル工事でも、要対策土が「想定外」に掘り出されて、その処理に時間とコストがかかり、工期延長の大きな要因となりました。一部は盛土区間に転用されましたが、高架橋を主体とする現在の高速道路で使いきれるものではなく、残りが富士川や早川沿いに盛土として置かれています。

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000660817.pdf
リニアでも、同じような事態になるんじゃないのかなあ。しかもリニアはトンネルばかりでわずかな地上区間も高架橋だけなので、JR東海が使う見込みがない。早川町内の要対策土仮置き場が恒久置き場に化けてしまいそう。
そういえばつい先日も、早川町内で要対策土の扱いで問題が起きたばかりだよなぁ・・・。
●普通の発生土も行き先が確保できてないのでは?
環境影響評価書では、富士川町と早川町で行われるトンネル発生土を570万立米ぐらいと試算。このうち180万立米は富士川町内の保守施設造成に転用する計画。残る400万立米について、ごく一部(23万立米)は早川町内の道路整備などに使うものの、大半は行き先が不透明な感じ。
そういえば山梨県との共同事業である早川芦安連絡道路に120万立米を使うという話がありました。これは早川町の北端から、巨摩山地をトンネルで貫いて南アルプス市芦安温泉へとつなごうというもの。トンネル整備費用はJR東海が負担することが決定(2017年)。完成したトンネルを使ってリニア発生土を芦安側に運び、道路盛土に転用するというものです。なおトンネルが計画されているのは、JR東海が避けた”巨摩山地の脆弱な地質エリア”のど真ん中。
⇒2014年時点での構想
https://www.nikoukei.co.jp/news/detail/256061

【平成26年 山梨県による事前評価資料】
2014年に事業化が決まり、当初は2015年度中に着工、2019年には完成している計画だったようですが、しかし計画が度々変更されたうえ災害にも見舞われ、2025年2月時点では、いまだトンネル本体には着工していないようです。また、当初盛土に160万立米を使うとされていたものが2017年には140万立米に変更され、その後、地質調査で盛土の難しさが判明したとか、道路トンネル自体の発生土の処理方法が未定だとか、妙な話も浮上してきました。
今の段階では、早川芦安連絡道路の完成は令和15年(2033年)を見込んでいるとのこと。
2030年代にならないと早川町内のリニア発生土は運び出せないのでしょうか?
(以下3/8に加筆)
●雨畑ダムの堆砂除去
そういえば、早川町では雨畑ダムの堆砂除去も大きな問題になっていることを思い出しました。
日本軽金属の雨畑ダムの上流には崩壊地が多く、多量の砂利がダムを埋め尽くしています。あまりにも溜まり過ぎて、ピーク時には周辺の道路よりも川底のほうが高くなるほどでした。当然、ダム上流では洪水被害が発生。さらに下流の富士川の汚濁が問題視され、その騒ぎの中で砂利採取業者による汚泥の不法投棄、水利権の目的外使用も発覚。
被害が相次いだことを受けて。同社は堆砂除去を決定(2020年4月)。
https://www.nikkeikinholdings.co.jp/news/news/p2020050702.html
2020~2021年度に300万立米、2022~2024年度に300~400万立米を搬出し、2025年以降は年60万立米程度を継続して搬出する計画となっています。4年間で600~700万立米を搬出するわけですから、早川町内におけるリニアのトンネル発生土の2倍に達します。つまり早川町内には1000万立米もの土砂運搬が発生しているわけです。
当然、行き先を確保しなければなりませんが・・・決まってないようです。リニア発生土よりも優先しなきゃならないのに。

【2024年1月31日 静岡新聞】
これでは、リニア発生土の行き先なんて決まらないわけです。
リニア中央新幹線のトンネル工事 工事完了は最大5年半延長の見通し示す 主な理由は想定よりもろい地盤 JR東海
https://news.yahoo.co.jp/articles/3dc153127359008c86f111a5f8f2513293bffac1
相変わらず何だかおかしいよなぁ・・・
リニアのルートを西にたどってゆくと、釜無川を渡ると急に南へ曲がってS字カーブを描き、静岡県境へと向かいます。カーブ走行は苦手とされる超電導リニアなのに、このS字カーブはなんとも不自然です。
JR東海は、このS字カーブについて「巨摩山地周辺の脆弱な地質エリアを避けるため」と説明してきました。説明図によれば、南北に広がる「脆弱な地質エリア」の南側を迂回しているようです。
【JR東海作成 環境影響評価配慮書(2011年6月)より】
だけど実際に掘ってみたら、選んだルートも地質状の難問が待ち受けていたわけです。
なんのこっちゃ。
この近傍を通る中部横断自動車道がもろい地質や湧水、要対策土処理に悩まされたことから、この区間の工事が難航するのは当初から予測できたのでは?と思うのですが・・。
それに、地質の問題だけでなく、様々な要因で工事が難航しているのではないかと思われます。
●トンネル断面積が異常に大きい
富士川町内には保守基地が設置されます。保守基地への引き込み線との分岐は、富士川町・早川町境の第四南巨摩トンネル(8627m)内におかれます。その分岐部分の断面積は300㎡以上となり、通常の本坑区間の約3倍に達します。道路トンネルを含め、この規模のトンネル断面積の前例は少ないようです。ただでさえ地質条件が悪く、土被りも500m前後あるところで、大変な大断面積のトンネルを掘るのですから、そりゃ難工事になるのは当然でしょう。
https://www.nikoukei.co.jp/news/detail/327258
●水問題
静岡県や長野県南木曽町のように大きな問題にはなっていませんが、第四南巨摩トンネルも周辺の水環境に大きな影響を及ぼすかもしれません。トンネルが富士川町大柳川流域の水源地帯と十石温泉の源泉付近をぶち抜くほか、大柳川とは浅い土被りで交差するためです。さらに、トンネルは1本ではなく上述の引き込み線用にも掘られる計画。ちなみにJR東海の予測では、大柳川下流部の流量は2割減少するとのこと。


第四南巨摩トンネル内で湧水が生じると、勾配の都合上、北隣の別流域へと排水されます。大柳川流域には戻せません。ここで水枯れが生じたら流域の水資源に大きな影響が生じますし、温泉の枯渇も大問題。さらに静岡県での議論をも左右するのは必定でしょう。
●要対策土の処理に困っていそう
現在、早川町内には要対策土の仮置き場が5ヵ所、合計22.7万立米分が設置されていますが、これで足りるのかどうか。
第四南巨摩トンネルや斜坑は、昭和43年に閉山された茂倉(もぐら)鉱山付近を通過します。茂倉鉱山は明治6年に採掘がはじまり、主として石こうが採掘されていましたが、当初は金、銀、鉛、亜鉛を含む硫化物鉱石が採掘されていたそうです。
う~む、鉛を含む硫化鉱物が掘り出されたら処理に困るのでは・・・?
中部横断自動車道のトンネル工事でも、要対策土が「想定外」に掘り出されて、その処理に時間とコストがかかり、工期延長の大きな要因となりました。一部は盛土区間に転用されましたが、高架橋を主体とする現在の高速道路で使いきれるものではなく、残りが富士川や早川沿いに盛土として置かれています。

https://www.ktr.mlit.go.jp/ktr_content/content/000660817.pdf
リニアでも、同じような事態になるんじゃないのかなあ。しかもリニアはトンネルばかりでわずかな地上区間も高架橋だけなので、JR東海が使う見込みがない。早川町内の要対策土仮置き場が恒久置き場に化けてしまいそう。
そういえばつい先日も、早川町内で要対策土の扱いで問題が起きたばかりだよなぁ・・・。
●普通の発生土も行き先が確保できてないのでは?
環境影響評価書では、富士川町と早川町で行われるトンネル発生土を570万立米ぐらいと試算。このうち180万立米は富士川町内の保守施設造成に転用する計画。残る400万立米について、ごく一部(23万立米)は早川町内の道路整備などに使うものの、大半は行き先が不透明な感じ。
そういえば山梨県との共同事業である早川芦安連絡道路に120万立米を使うという話がありました。これは早川町の北端から、巨摩山地をトンネルで貫いて南アルプス市芦安温泉へとつなごうというもの。トンネル整備費用はJR東海が負担することが決定(2017年)。完成したトンネルを使ってリニア発生土を芦安側に運び、道路盛土に転用するというものです。なおトンネルが計画されているのは、JR東海が避けた”巨摩山地の脆弱な地質エリア”のど真ん中。
⇒2014年時点での構想
https://www.nikoukei.co.jp/news/detail/256061

【平成26年 山梨県による事前評価資料】
2014年に事業化が決まり、当初は2015年度中に着工、2019年には完成している計画だったようですが、しかし計画が度々変更されたうえ災害にも見舞われ、2025年2月時点では、いまだトンネル本体には着工していないようです。また、当初盛土に160万立米を使うとされていたものが2017年には140万立米に変更され、その後、地質調査で盛土の難しさが判明したとか、道路トンネル自体の発生土の処理方法が未定だとか、妙な話も浮上してきました。
今の段階では、早川芦安連絡道路の完成は令和15年(2033年)を見込んでいるとのこと。
2030年代にならないと早川町内のリニア発生土は運び出せないのでしょうか?
(以下3/8に加筆)
●雨畑ダムの堆砂除去
そういえば、早川町では雨畑ダムの堆砂除去も大きな問題になっていることを思い出しました。
日本軽金属の雨畑ダムの上流には崩壊地が多く、多量の砂利がダムを埋め尽くしています。あまりにも溜まり過ぎて、ピーク時には周辺の道路よりも川底のほうが高くなるほどでした。当然、ダム上流では洪水被害が発生。さらに下流の富士川の汚濁が問題視され、その騒ぎの中で砂利採取業者による汚泥の不法投棄、水利権の目的外使用も発覚。
被害が相次いだことを受けて。同社は堆砂除去を決定(2020年4月)。
https://www.nikkeikinholdings.co.jp/news/news/p2020050702.html
2020~2021年度に300万立米、2022~2024年度に300~400万立米を搬出し、2025年以降は年60万立米程度を継続して搬出する計画となっています。4年間で600~700万立米を搬出するわけですから、早川町内におけるリニアのトンネル発生土の2倍に達します。つまり早川町内には1000万立米もの土砂運搬が発生しているわけです。
当然、行き先を確保しなければなりませんが・・・決まってないようです。リニア発生土よりも優先しなきゃならないのに。
【2024年1月31日 静岡新聞】
これでは、リニア発生土の行き先なんて決まらないわけです。
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