田代ダム下流では取水制限しなくても流量が増える?

山梨県側から静岡県側の地下を掘ると、そこで生じた湧水は大井川に戻せません。流域外への流出となり、河川流量維持において懸念があります。そこでJR東海が提示したのが田代ダム取水抑制案。大井川から富士川水系へと水を送っている田代ダムの取水量を、山梨県側へ流出するトンネル湧水量に応じて取水制限させようというものです。

田代ダムの取水減らす.jpg

静岡県庁ホームページ 

JR東海ホームページ 

この案について考えていたら、ちょっと分からなくなってきました。

田代ダムは東俣、西俣という2本の河川の合流点下流に設置されています。このうち西俣は、静岡工区のトンネル掘削で流量が大幅に減少する可能性があります。何も対策をしないという条件では、冬の渇水期にはほとんど枯渇するとの結果も出ています(前々回ブログ記事に記載)。

すると田代ダムへの流量が減少する。その場合、取水抑制するほどの水を確保できるのか?という視点で問題が提起されています。ただ、これはまあ大丈夫だろうということで話が進んでいるようです。

しかしこの件、もう一つ視点が必要だと思うのです。

静岡工区は静岡県内の大井川流域内、千石と西俣の両非常口から掘削されます。千石非常口は田代ダムの下流、西俣非常口は田代ダムより上流です。

このうち千石非常口は、西俣に沿って浅い土被りで斜坑を掘るうえ、西俣沿いに想定される断層破砕帯と斜めに交差するかたちになります。そのため西俣の表流水を引き込み、多量の湧水が生じるかもしれません。その湧水は、工事中はポンプでくみ上げて非常口から大井川へと排水されます。また、先に導水路を掘った場合は10㎞以上下流の椹島付近で排水されます。いずれにせよ、西俣の水をトンネルに引き込んで田代ダム下流へと迂回させる流れが生じてしまうかもしれない。

以前、JR東海が示した予測は次の通り。
千石非常口排水.jpg
【2020年1月24日 JR東海が県に提出した資料から】

このとき田代ダム流入地点では、現状で毎秒4.1トンだったのが、トンネル掘削により毎秒3.8トンに減るとされます。しかし千石非常口から毎秒0.6トンが排水されるので、その分が増える。

取水制限しなくても流量が増えるという、妙な状態となります。

この状況下で田代ダムの取水抑制をかけたら、二重の抑制をかけてるようなものではないでしょうか。

なんだか頭がこんがらがてきました。



この記事へのコメント