千石非常口大量出水のせいで田代ダム案は成立しない??

3月11日開催の静岡県 中央新幹線環境保全連絡会議 第19回地質構造・水資源部会専門部会において、委員から「千石斜坑を掘削中に断層から大量の出水が起こり、田代ダム流入量が減るおそれがある。その場合、田代ダム案は成立しなくなるのではないか」といった発言がありました。

静岡県内の一部市民団体からは、これを一大問題ととらえる向きがあるようです。

だけど、結論から言うと、あんまり大きな支障にはならないのではないかと思います。

南アルプストンネル山梨工区は、県境を越えて1㎞ほど静岡県側に食い込んでいます。JR東海によると、この区間に大量湧水の想定される大規模な断層破砕帯が南北に延びており、その区間は上り勾配で(つまり山梨側から)掘削しないとトンネルが水没するおそれがあるためだと説明しています。

しかし山梨工区は山梨県側から掘るので、この区間で発生した湧水は山梨県側に排水されることになります。静岡県にとっては、県内に存在する水資源の損失に当たります。そこで湧水をポンプアップすることになりますが、しかし当然ながら、トンネルが静岡工区とつながるまでの間は、戻すことができません。そこでJR東海が提示したのが田代ダム取水抑制案。

田代ダム取水抑制案は、山梨県側から掘削する先進坑が県境を越えて静岡県側の先進坑とつながるまでの期間(10ヶ月と想定)に、静岡県から山梨県へ流出するトンネル湧水量(県外流出量)を計測しつつ、同時期に、田代ダムにおいて、県外流出量と同量を大井川から取水抑制し、大井川に還元する方策です。
【県庁ホームページより】


この説明にある通り、山梨工区を掘り終えたときには静岡工区先進坑と接続する算段になっています。

見方を変えると、山梨工区先進坑は、静岡工区の東向き先進坑先端が工区境付近に到達するまで、掘削を中断していることになります。


千石非常口排水.jpg

つまり静岡工区を掘削している最中には、静岡県側でどれほど大量湧水が起きようとも、県外流出は発生しません。そして上図にある通り、山梨工区先進坑が県境を越える段階では、静岡県側で湧水を大井川に流す導水路も完成している前提となっています。

確かに千石非常口は西俣に沿って計画され、その西俣は北西-南東方向に延びる断層に沿っていると考えられてます。西俣沿いに地質が脆弱になっており、西俣の水を引き込むと考えても不思議じゃありません。西俣というのは田代ダムに流入する水の半分を涵養しているので、西俣の流量減少は田代ダム流入量の減少を意味します。

地質図 二軒小屋付近.jpg

ただ、仮に大量湧水によって田代ダム流入量が激減しても、その湧水は導水路によって大井川に排水されます。導水路より下流に届く水の総量自体は現状と変わりません。むしろ田代ダム流入量が減ればダムを素通りする水は増えます。田代ダムで取水抑制できなくなっても、皮肉にも取水抑制しているのと同じになってしまいます。
(市民団体は工事の順番についての認識が十分でないようです)

千石非常口掘削によって田代ダム案が成立しない場合は、下表でいえば「取水抑制するための水量が不足する不確実性への対応」に相当すると思われます。理屈の上では起こり得るものの、下流の水資源への影響は大きくないと考えられるので、大きな支障とななりえないのではないかと思われます。
3.11対話状況.jpg



ただ、水生生物への影響という点では大問題であり、まだまだ議論の先行きは見えてません。
3.11対話状況 生物多様性.jpg





この記事へのコメント