名古屋まで11兆円

テレビや新聞のニュースでも報じられてますが、リニアの工事費見積もりが11兆円となったそうです。


JR東海が2009年6月に発表した時点では、品川-名古屋の工事費は5兆1000億円と見込まれておりました。

2014年10月の事業認可段階では5兆5235億円に増額。この増額分は主として中間駅の工事費をJR東海が拠出するとしたためです。なお品川-大阪間の総事業費は9兆300億円と試算されました。

9年経った2023年12月には7兆482億円に増額。これは「駅・車両基地の建築工事や設備工事、車両等の費用を追加するとともに、難工事への対応、地震対策の充実、発生土活用先の確保等に伴う」ためと説明されました。

そしてこのたび約4兆円の増額。JR東海の説明によれば、物価上昇によりプラス2.3兆円、難工事への対応としてプラス1.2兆円、仕様の深度化、つまり設計変更にいよりプラス0.4兆円とのこと。

11兆円となると、2014年の予想に比べて2倍に増えています。名古屋‐大阪間も事情は同じでしょうから、単純に考えれば総事業費は20兆円近くに達するのではないでしょうか。

また、これは工事費の増額ですが、各種の補償のほか、完成後の維持管理費なども増えてくるのではないでしょうか。

工事費増額を発表した前日に起きた品川区での路面隆起。まだリニア工事との因果関係は不明ですが、もし関係があるのなら、また工法の変更などを検討せざるを得ないでしょう。

また、岐阜県で進行中の水枯れや地盤沈下への補償、南アルプストンネルで想定されている湧水を汲み上げるための電気代(青函トンネルではJR北海道の経営に影響を及ぼすほどのい金額になっているらしい)なとは現時点で未知数です。

南アルプスでの環境保全にかかるコストだって無視できない額となるのではないでしょうか。ネイチャーポジティブとやらでシカ食害対策やヤマトイワナ増殖に協力するといった話が出ていますが、ボランティアではなく事業としてやる以上、長期にわたりそれなりの費用はかかるでしょう。


そういえば国土交通省は、2045年大阪開業時における南アルプスルートでの総便益は8.4兆円と見込み、費用を5.5兆円とした場合の費用便益比を1.51と試算しておりました(2010年 第9回中央新幹線小委員会)。

費用対便益比2.jpg

この5.5兆円の費用とは、当日の議事録によれば「建設費とか維持運営費、そういったものを現在価値に割り戻し」たものだと説明されています。当時の総事業費見込みは9.3兆円、年間の維持運営費3080億円、1年あたりの設備更新費は1210億円とされてましたが、今や大幅に増えていることになります。計算をやり直したらどうなるのだろう?

また、京都大学の藤井聡教授は、30日のラジオ番組で、

「そりゃあ常識的にこんなことはあり得ますよね。資材が高騰しているんだから。リニアが4兆円だとか7兆円だとかって言ってる数字って、20年ぐらい前の話ですよ。そりゃあ高くなりますわ」
https://www.joqr.co.jp/qr/article/163347/

とおっしゃっていたようですが、ちょっと無責任じゃないのかなぁ。5兆5200億円と言っていたのは11年前のことで、20年も昔じゃない。そのうえ二度の増額の半分程度は難工事への対応、地震対策、環境対策、計画の深度化による変更にともなうもので、これらはいわば事業見通しが甘かったためと言うべき。何でもかんでも物価上昇のせいにするのはよくない。

この方、内閣参謀参与を務めていた2016年には、安倍首相に対してリニアを含む公共事業への積極関与を求めています。この提言でJR東海への3兆円の財政投融資が決まったようなものです。当然、当時は「事業費5兆5200億円、2027年名古屋開業」が前提とされてました。その前提がどんどん崩れているのだから、もう少し真剣に向き合ってほしいと思うところです。

JR東海の発表には次のようなことも書かれています。
リニアのために値上げ.jpg

今後、インフレが続く場合、リニア建設費を確保するために既存鉄道の料金・運賃を値上げする可能性を示唆してるわけです。赤字ローカル線維持のためならともかく、道楽みたいなリニアのために値上げするのはいかがなものか・・・

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